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糸井重里、『報ステ』、小泉今日子。コロナ禍で浮かびあがったサブカルバブルの亡霊たち

コロナ禍で株を下げた人たち…

■パンデミックは「生ける亡霊」たちも浮かびあがらせている

 とまあ、こうした炎上に共通するのは、叩かれたのがバブル華やかな時代のサブカル賛美的空気のなかでもてはやされた人たちだということだ。そして、そんな空気のなかで生まれたテレビ文化においても炎上が起きた。『報道ステーション』(テレビ朝日系)のことだ。

 この前身は『ニュースステーション』で、バラエティ色の強かった久米宏が司会を務め、ニュースをワイドショー化することで成功した番組だ。司会が古舘伊知郎に引き継がれる際、タイトルが変わった。現在は局アナの富川悠太が司会だが、その富川がコロナに感染。番組関係者にも4人の感染者が出た。

 感染予防を呼びかける側としては、いかにもまずい。予防できなかった番組そのものが批判対象になってしまった。富川には気の毒だが『news every.』(日本テレビ系)の藤井貴彦アナがソフトなメッセージを地道に発信して支持され、株を上げたのとは対照的だ。

 そこには「Nステ」から「報ステ」へと受け継がれたサブカル的手法への辟易や反発もあったのだろう。久米も古舘も政治などのメインどころにチャチャを入れる芸風で、コロナ禍のような非常時には役に立たない。ともすれば「感じの悪さ」にもつながる芸風である。

 そんな「感じの悪さ」を今、誰よりも象徴しているのが『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)のコメンテーター・玉川徹だ。もともと暴走しがちな人だが、コロナ禍がそれをさらに加速させている。

 「勘違いして欲しくないんですけど、日本人と日本のために良かれと思ってやっているんですよ」(『大竹まこと ゴールデンラジオ!』文化放送)

 という信念というか、思い込みにより、間違い発言を連発。4月には東京都の検査機関をめぐる発言で3分間にわたり、謝罪するハメとなった。

 しかも、その数時間後には、その間違い発言を真に受けた古舘が『ゴゴスマ』(TBS系)に登場。

 「テレビ朝日の玉川徹さんもおっしゃっているように(略)土日は民間しか検査していない」

 とコメントして、司会の石井亮次アナに「いや、それは今朝の番組で明確に否定していました」と訂正されていた。「感じの悪さ」の連鎖に、見ていて苦笑してしまったものだ。

 そんな古舘や糸井らがかつてもてはやされたのは、当時のサブカルバブルが「軽さ」や「奇をてらうこと」を好んだからだ。そして、そんな空気を象徴していたアイドルが小泉今日子である。2年前に不倫で大手事務所のバーニングをやめて以来、目立たなかったが、検察庁法改正案をめぐり、反対するツイートを連続投稿。

 「私、更に勉強してみました。読んで、見て、考えた。その上で今日も呟かずにはいられない」

 などとつぶやいた。ただし、具体的に何を考えたのかは伝わってこない。この人は昔、中森明夫をはじめとする新人類文化人に持ち上げられ、そのオモチャになることでサブカルの女王的存在にのしあがった。今回も左寄りの反権力層、いわゆる「アベガー」のオモチャになることで復権しようとしたのだろう。

 この背景にも、コロナ禍がある。仕事がなくなり、ヒマを持て余した芸能人たちがよくわからないまま政治運動になだれこんだのだ。そんななか、指原莉乃が『ワイドナショー』(フジテレビ系)でこの問題に言及。「#検察庁法改正案に抗議します」をつけてツイートすることへの誘いが自分のところにも来たとしたうえで、

 「もちろん勉強したうえでこれを書いてる人もたくさんいると思うんですけど、もしかしたら、なんかたった一人の言ってることを信じて、書いてる人もいるんじゃないのかなって思っちゃいます」

 と、冷静なところを見せた。ネットリテラシーにも長けた、現役有数のバラエティタレントと比べたら、小泉などはとっくに「過去の人」でしかない。

 思えば、コロナ禍によって株を下げた有名人の大半がかつては売れていた人たちだ。パンデミックはそんな「生ける亡霊」たちも浮かびあがらせているのである。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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